好き避けならぬ、避けられ避け

 昔どこかで聞いたことのある言葉を、最近また聞くようになった。「好き避け」。サークルの後輩の女子がしているということで、サークル内で話題になっている。相手のことを好きにならないように敢えて冷たい態度を取るという、ツンデレのような態度だ。現実にもツンデレは意外とあるものだ。こんなことをする心理はおおよそのところ見当がつく。好きになっても報われないから。思い込みなのか推測なのかは場合次第だ。なんなら相手に既に交際相手がいる場合は事実だ。ともかく、相手から好意を示されるまであえて冷たい態度を取る、それが好きよけだ。段々精神的に老けてきた俺にとっては、こういう恋愛感情がうらやましく思える。

 

 恋愛はめっきりしなくなった、というか与えられた状況だけで恋愛感情を抱くことはなくなった俺だが、範囲を男女関係から一般的なコミュニティに広げると該当するかもしれない。

 

 自分語りから始める。最近ずっと親友がいないと言っているけど今日もその話。周りの人達との溝をこちらから埋めようとしても埋めてもらえない。踏み込んでも踏み込まれない。遠慮してもやはり踏み込まれない。正直詰んでいるかもしれない。そんな時俺の癖で、「どうせ本音を話しても建前で話してても仲良くなれないならもう切ろう」と思って余所余所しい態度を取る。相性が悪いから仕方がないと諦めてしまうのだ。

 この手の話を男女関係に拡大すると、「踏み込まれるの待ってるだけじゃあ、ね」とか言ってくる奴がいるけど、そんなレベルじゃない。俺は開放主義でかなり本音を漏らすタイプだ。相手のことにもよく言及する。でもそんなことをしても仲良くなれる人間なんていなかった。だから建前を練り混ぜてやってきたのだが、やはり本音は受け入れられない。一定以上仲良くなるには本音で話す必要があるが、本音を話すと避けられる。もうこれ性根が社会に嫌われてんじゃん。

 本音を話すと岩の裏、建前で話すと面白ピエロ。岩の裏が親友を作るなんてやっぱり難しいのかもしれない。