煙草やめた話

 最近、たばこをやめた。就職活動を本格的に始めた3月から吸い始め、内定が出た7月上旬までは継続的に吸っていた。そこからは気分が乗った時にコンビニまで買いに行って、そのひと箱がある内は日に4~5本吸って、なくなったら次の機会まで吸わないって感じのライトな吸い方だった。そして、ついに9月に入って喫煙の意味が見いだせなくなってやめた。半年しか続かなかったから、依存症にもなれていない。

 

 元々、きっかけは映画「何者」で主役の苦労就活生が煙草を吸うシーンがカッコよくて「俺も就活生になったらやろう」と思ったから。もう一つ大きなきっかけは、後輩達の喫煙者組が仲良さそうにしていたからだ。きっとここに混じればここの人達と仲良くできるのだろうと思って吸い始めた。

 

 しかし、いざ俺が混ざって喫煙をはじめても当たり障りのない会話しか行われなかった。

「最近いいことないっすね~」

「せやな~」

 こんなもん。喫煙所で誰かと本音の会話をした記憶はない。

 

 がっかりしたから一人で吸うことが多くなったのだが、この感じもイマイチ。嫌なことや悲しいことがあると吸うって感覚だったのだが、普通に風呂上りや寝起きの方がうまい。気分転換という意味で役に立ったといえばそうかもだけど。

 

 そんなこんなで、もう吸わなくなった。自分のことを見下している後輩が、やっぱり見下しながら「吸うようになったんすね~」って言ってきたのがトドメだった。

 

 

 これで終わればただの健康話。だが、話のオチはここからである。

 吸わなくなってからしばらくしてから聞いた話。

「あいつら前煙草吸いに行くときの会話で、『今日アイツいないって~』ってお前のこと呼び捨ててたよ」

 俺の同期の男がボソッと言った(こういうことを隠さず言ってくれるのは流石6年ともにした同期と言わざるを得ない)。

 この時、静かに脳が破壊された。表面上だけでも1年間仲良くしていた後輩だったから多少なりとも信頼していたのが裏目に出た。人間不信な俺が最低限レベルに込めた信頼はやはり嘘だった。

 道理で一緒にタバコ吸っててもロクな話にならねえ訳だ。クソったれ。

 

 今回の件で分かったことが二つある。一つは喫煙で仲良くなれるのであれば、吸わなくても仲良くなれること。もう一つは、付き合いがそれなりに合って仲良くなれない人からは、程度こそあれ陰口叩かれている。「口に出す」という行為がそれなりの確率で行われるのだから、内心嫌われている確率はもっと高いだろう。

 それにしても、よくも世間はこうも俺を人間不信の穴に押し込もうとするものだ。